人生会議の意義と進め方
人生会議とは、人生の最終段階における医療やケアについて、本人の希望や意向を確認し、家族や医療従事者と共有する重要なプロセスです。近年、終活が注目され、多くの人が終末期における医療の選択や、愛する家族とのコミュニケーションの取り方に悩んでいる中で、人生会議は自己決定権を尊重し、より良い最期を迎えるための大切なステップとなっています。本ブログでは、人生会議の基本的な意味や進め方について詳しく解説していきます。
目次
人生会議とは何か?心の準備を始める第一歩
2018年に厚生労働省が改訂した『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』に盛り込まれたのが、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という考え方で、ACPの愛称が『人生会議』です。ACPの普及や認知度の向上のため、愛称の公募が行われ、聖隷浜松病院に勤務していた看護師が提案した『人生会議』が選ばれました。 ACPは「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)」の略で、直訳すると「アドバンス=事前の」「ケア=介護、看護」「プランニング=計画」です。将来の変化に備え、その時の医療やケアについて、本人を主体にその家族や近しい人、医療・ケアチームが繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援するプロセスのことです。単に終末期の“医療”を決めておくことだけではなく、「自分が何を大切にして、どのように生きていきたいのか」といったことを考える仕組みなのです。
人生会議への注目
厚生労働省が実施した、【令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書】によると、『あなたは、人生会議(アドバンス・ケア・プランニング<ACP>)について、これまで知っ ていましたか。』という質問に対して、「よく知っている」と答えたのは、医療・介護職従事者で約46%、一般の人ではなんと約6%でした。
欧米など医療費が高い国では、せっかく高いお金を払うのだから、受ける医療について自分で選択したいという意識が高いです。米国では90年代にスタートした、医師による指示書である「POLST(ポルスト:Physician Orders for Life-Sustaining Treatment)」というものがあり、重症患者と医師が相談し、万が一の時に尊重すべき具体的な医療命令の作成を奨励しています。これは法的効力があります。
一方、すべての人が保険に加入している国民皆保険の日本では、医療に対する信頼感が強い傾向があることなどが影響しているのか、一般の人の意識はまだまだ高くはありませんでした。
しかし近年は、個人の価値観が多様化しており、さらにコロナ禍で自身の病気や死について考える時間が増えた結果、徐々にACPが注目されるようになったともいえます。
なぜ人生会議が必要なのか?
治療や延命措置などについて選択が必要になった時、本人の意思が確認できない状態であれば、一般的には家族が医療スタッフと話し合って方針を決めることになります。しかし、本人の人生観や価値観が分からない状態で決めなければならないことは、家族にとって大きな精神的負担となります。その決断を下した後で本人が亡くなった場合、「本当にあれを選んでよかったのか」と自問自答し、落ち込んだり、後悔したりすることもあります。親族などから「どうしてそんな選択をしたのか」と批判されることもあるかもしれません。
しかし事前にACPに取り組んでいれば、この人はこんな人生を歩み、こんな希望をもって生きてきたのだから、きっとこの措置を選択するだろう、この人にとってはこれを選ぶことが幸せだろうと推定できます。
例えば、病気や高齢になってかかりつけ医をもつようになれば、どのように病気とともに生活していくのか、病気との向き合い方などについて医師と話し合っておきます。
介護が必要になった時には、訪問看護・介護スタッフ、ケアマネジャー、地域の行政サービスの担当者などと、どのようなケアを受けながら過ごしていきたいか、などついて話し合っておきます。
命に関わるような病気になったり、余命がみえてきたりした時には、人工呼吸器や輸血、透析、看取りの場などについての希望を医療・ケアチームとともに話し合っておきます。
誰に何を言われようと、本人にとっての最善を選択できたはずだと、家族も医療・ケアチームも自信を持つことができるのです。
家族と話し合うきっかけ
医療や介護のスタッフとなら、話し合いやすいですが、自身の家族となると照れくささもあり、話し合うきっかけを作ることが難しく思えるかもしれません。そこでおすすめなのが、「もしバナゲーム」です。米国で開発された「GO WISH GAME」というカードゲームの日本語版で、例えば自分があと1、2カ月しか生きられないとしたら、「どのようにケアしてほしいか」「誰にそばにいてほしいか」「自分にとって何が大事か」といったことを考え、選択していきます。「縁起でもない」と避けていた話題も、気軽にゲームを通して、友人や家族の願いを理解しあうきっかけ作りになるのではないでしょうか?
プランの見直し
病状の進行や家族の状況などによって、本人の希望は変化するものです。
例えば、延命治療は望まない指示を出していたとしても、「孫の結婚式が決まったから、それまでは人工呼吸器をつけてでも生きたい」と変わることは十分に考えられます。意思決定のための話し合いは繰り返す必要があり、エンディングノートを記している人も、お正月やお盆など時期を決めて見直すことが大切です。
最後に・・・
意思を伝えることができなくなる日が、いつ訪れるのかは誰にもわかりません。自分の人生観や価値観を見直すことは、今すぐにでもできることです。これからの人生をより前向きに生きるためにも、ACPを始めてみてはいかがでしょうか。