終活で考える臓器提供の手続き
終活は人生の最期を考える大切な活動ですが、臓器提供について考えることもあるかもしれません。臓器提供は、自分自身の意思を尊重し、他の人の命を救うための一つの方法です。しかし、実際に臓器提供を考える際には、多くの疑問や不安があるかもしれません。本ブログでは、臓器提供の意義やその手続きについて解説していきます。
目次
臓器提供とは
1997年に「臓器移植法」が施行され、脳死状態における心臓、肝臓、肺など多く臓器の移植が可能となりました。公益社団法人日本臓器移植ネットワークによれば、臓器提供とは「重い病気や事故などにより臓器の機能が低下した人に、他者の健康な臓器と取り換えて機能を回復させる医療に必要な臓器を提供する」ことを言います。日本で臓器提供をまっている患者は約1万4000人であるのに対し、実際に移植を受けられる患者の数は年間およそ400人程度となっているといいます。本人の意思があって成り立つ善意ですが、それを実行に移すためには事前の登録が必要です。
臓器提供の意思表示
自身の身体を役立ててほしいと思った場合は、生前に本人の意思表示が必要です。
臓器提供の意思を示すには、
①健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードの意思表示欄
②インターネットによる意思登録
③意思表示カード
3つの方法があります。
臓器提供の意思があることを家族が知らないと、自身の意思が反映されないことがある為、事前に家族と話し合っておく必要があります。
また、実際の移植の際には家族の総意としての承認が必要なため、一人でも反対者がいれば臓器提供はされません。
身寄りがない方の場合は、本人の意思表示のみで可能です。
献体との違い
献体は医療・医学の発展の為、臓器提供は移植手術を必要とする人の為、と考えられます。どちらも人の為になることですが、臓器提供はより直接的に人の命を救うことが可能です。 ちなみに、臓器提供をする場合は献体を行うことはできません。献体された体は、医学部や歯学部の大学教育の中の、研究や手術訓練、医学教育に利用される為、全ての臓器が揃った状態を望まれるからです。
提供できる臓器
「脳死」か「心臓が停止した死後(心停止後)」かによって、提供できる臓器が違います。違いがあるのは、血液の流れが止まった状況から移植して、血液の流れを再開した時にどれだけ機能を発揮できるのか、の違いによるものです。
心停止後の臓器提供では、心臓が止まった死後に手術室に向かい、少しの間血液の流れが止まるため、速やかな対応が必要です。提供できる臓器は、腎臓、膵臓、眼球です。必要な体制が整備されていることが前提となりますが、手術室がある病院であれば提供が可能です。
脳死下の臓器提供の場合は、血圧、脈拍、体温、尿量など安定した状態で臓器摘出手術を行い、摘出直前まで血液の流れがあることから、心臓・肺・肝臓(分割可)・腎臓・膵臓・小腸・眼球の7つの臓器を最大11人に提供することが可能です。
臓器提供の流れ
~脳死下での臓器提供の流れについて~
《臓器提供についての説明》 主治医等が、患者を脳死とされうる状態と診断し、家族に病状説明をします。その際、家族から「臓器提供について話を聴きたい」と申し出があれば、主治医からJOT(公益社団法人日本臓器移植ネットワーク)に連絡が入り、JOTが臓器移植コーディネーターを派遣し、臓器提供に関する説明をします。
《家族の意思決定》 説明を受けた後、家族で十分に話し合い、臓器を提供するかどうかを家族の総意として決めます。受け入れることができず、承諾しないこともあります。その場合は本人の意思表示より家族の意思が優先されるので、臓器提供は実施されることはありません。最終的に提供しないと判断したからといって、不利益な扱いを受けることはありません。
《脳死の判定》 家族の承諾を得て臓器提供が決定した場合は、脳死の判定をするため、法律に基づいた厳格な脳死判定を2回行います。2回目の脳死判定が終了した時刻が死亡時刻となります。家族が希望すれば、脳死判定に立ち会うことも可能です。
《移植を受ける患者の選択》 JOTに登録している移植希望者の中から、医学的に最も適した人がコンピューターを用いて公平に選ばれます。
《臓器の摘出》 法的脳死判定が終わり、移植を受ける患者が決まると、摘出手術が行われます。 3~5時間の手術の後、摘出された臓器は、移植希望者が待つ施設に迅速に運ばれます。
《身体のお戻し》 手術の後に、お身体は家族の元に戻ります。傷跡には清潔なガーゼなどを当てて、手術の痕が分からないようにします。(眼球提供の際は義眼を入れます)。その後は、通夜や葬儀など大切な方々との時間を過ごしていただけます。
>ポイント<
臓器提供では、「親族優先提供」が可能です。親族優先提供とは、配偶者・子供・父母の親族へ優先的に臓器提供を行うことができるものです。
ただし、以下の条件を全て満たしている必要があります。
◉本人(15歳以上)が臓器を提供する意思表示に併せて、親族への優先提供を書面にて表示している
◉臓器移植の際、親族(配偶者・子供・父母)が移植希望登録している
◉医学的な条件(適合条件)を満たしている
上記全ての条件を満たさないと親族優先提供をすることはできません。
ちなみに、自殺の場合は親族優先提供は実施されません。
理由としては親族提供を目的とした自殺を防ぐ為です。
他にも注意点として、特定の誰かを指定して提供をすることはできません。
「提供者は○○さんのみ」や「親族以外は提供しない」といったような意思表示がある場合は、親族を含め臓器提供は実施されません。
最後に・・・
終活といえば相続や葬儀のことを考えがちですが、自身の身体には何ができるのでしょうか。 するかしないかはさて置き、終活を考えたこの機会に、献体や臓器提供などについて一度調べてみるのもいいかもしれません。