尊厳死宣言書の作成手順|終末期医療に向けて考えよう|終活業界
近年、高齢化社会が進み、終末期医療に関する問題が注目されています。そんな中、尊厳死宣言書というものがあります。尊厳死宣言書は、自身が不治の病などになった場合に、延命治療を止めることを希望する旨を記した書類です。今回は、尊厳死宣言書の作成手順についてご紹介します。終活に興味がある方や、終末期医療に向けて考え始めた方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
尊厳死とは
医療技術が年々高度化し、意識がない状態(植物状態)になっても、生き続けることが可能になっています。 しかし、その様な状態を見られたくない、またそのような状態になってまで費用をかけ、生き永らえたくはない、と考える方もいらっしゃると思います。「尊厳死」とは回復の見込みがなく、植物状態が続くなど末期状態の患者に対し、生命維持治療・延命措置を差し控え又は中止し、人間としての尊厳を保った自然な死を迎えさせることです。「尊厳死」に関しては、遺言のように法令整備がまだない為、あとでトラブルが生じないよう、信頼できる方法を取る必要があります。
その為、確実に患者本人の意思を実現するために、意思表示を明らかにしておく必要性があり、そのための手段として考案されたのが「尊厳死宣言書」なのです
尊厳死宣言書とは
尊厳死宣言の方法としては、尊厳死宣言書を公正証書として作成します。遺言書と同じく、自筆の書面のみだと、本人が内容をきちんと理解した上で、自分で署名捺印をしたのか、という争うが生じる可能性があるため、公証人立会いの下で作成される公正証書だと安心です。
尊厳死宣言は、「リビング・ウィル」=「生前発効の遺言」ともいわれます。
記載すべきこと
医師には、患者の生命を守り、最大限の治療をすべき義務があるため、本来は延命に全力を挙げます。そのため、いくら患者の意向であったとして、個人的な判断で命を縮めるような行為をすれば、殺人罪(刑法199条)ないし、自殺幇助、嘱託・承諾殺人罪(刑法202条)などの犯罪に問われる危険を負う可能性さえあります。そのような事態にさせないためにも、尊厳死宣言の中には書いておくべき事がいくつかあります。
●尊厳死を希望する意思表明
延命治療を拒否して、人間としての尊厳を保ったまま最期を迎えたい、苦痛を和らげる最小限の治療以外の措置を控えて欲しい旨を記載しておきます。
●尊厳死を望む理由
尊厳死を望む理由を書きましょう。尊厳死を望む理由は人それぞれです。「安らかな死を迎えたい」「家族の介護や経済上の負担を与えたくない」など理由を書くことで、家族や医療関係者への説得力が増します。
●家族の同意
尊厳死宣言書を作成しても、家族が延命措置を希望する場合は、医療機関は無視することができません。そのため、尊厳死宣言書に家族の署名と押印をもらいましょう。できる限り家族で話し合い、同意が得られた場合は、証明するために尊厳死宣言書に家族の署名と押印をもらいましょう。そうすることで自身の希望が通りやすくなります。
●医療関係者に対する免責事項
延命措置を中止して、家族や医療関係者らが法的責任を問われることのないよう、警察、検察等関係者の配慮を求める事項も必要です。刑事責任のみならず、民事責任も問われないように配慮しましょう。
●尊厳死宣言の有効性
尊厳死宣言書の作成時に、心身ともに健全であったことや、自分で破棄・撤回しない限り効力を持ち続けることを明示しましょう。
費用や準備するもの
公正証書を作成の際に必要なものとしては、以下の3つです。
・印鑑登録証明書(公正証書作成の日から3か月以内に発行されたものであること)及び実印
・本人確認証明書(運転免許書・パスポート・マイナンバーカードなど)
・認印
費用は、基本手数料が11,000円、正本代が約750円(正本1枚につき250円かかりますので、署名用紙1枚含め正本3枚とした場合は、正本代750円となります。)の合計11,750円程度です。
最後に・・・
公益財団法人日本尊厳死協会の2023年度のアンケートによると、尊厳死宣言を医療者に伝えてみて、「受け入れられましたか」の質問には「十分受け入れられたと思う」が74%、「どちらかといえば受け入れられたと思う」は21%で、合わせて95%のご遺族が尊厳死宣言の効力を認められているそうです。
尊厳死宣言書を書けば必ずその通りになるわけではありませんが、延命治療について希望がある場合は、ご家族とよく話し合って、終末期医療について考えてみましょう。