生前事務委任契約で安心の財産管理方法
いつ、どんな事故や災害が起こるのか分からない中、元気なうちから予め自分の意向を明確にし、安心して財産を管理してもらう方法として注目されているのが生前事務委任契約です。この契約を結ぶことで、信頼できる人に財産管理や各種手続きを依頼し、安心して暮らすことができます。そこで、今回は生前事務委任契約のメリットや注意点、具体的な活用方法について解説していきます。
目次
生前事務委任契約とは
生前事務委任契約とは判断能力が十分にあるうちから、財産管理・各種支払い・病院の手続きなどをサポートしてもらう契約です。判断能力も十分にあり後見契約を使うまででは無いが、たくさんの郵便物があるが重要なものが分からない時、足腰が弱くなってきて銀行や役所を回るのが大変な場合や、医療機関や施設に入院・入居する場合の手続きや支払いなどが大変な場合、役割を代行してもらえます。
契約内容は?
生前事務委任契約の内容は、大きく分けて2つあります。財産管理分野と医療看護分野です。
《財産管理》
●金融機関の口座の出し入れ
●年金の受取
●不動産収入(家賃・地代など)の受取り
●保険の締結や請求、解約など
●賃貸住宅の入退去手続、家賃の支払い
●行政機関への手続きの代行 など
《医療看護》
●入退院の支払いや手続き
●介護保険や福祉サービスの契約管理や立会
●要介護認定や介護サービスの利用手続き、支払い
●手術の立会や説明を一緒に聞く など
サポートをお願いする企業によっては、日常生活での困りごとにも対応するサービスや、将来の年間収入・支出を予測してライフプランを算出するサービスもあるようです。
契約を結ぶ時の注意点
●公正証書で締結する
生前事務委任契約は、書面無しの口約束でも、チラシの裏に書いた契約書でも可能です。
しかし、適当な契約書の場合、勝手に偽造したと思われるリスクもあるため、行政・金融・医療機関などの外部に向けて事務委任を証明したい場合は、公証人が間に入って行う公正証書の方が信頼性が高く確実です。
●内容を明確にする
生前事務委任契約にて、受任者に渡す権限は慎重に定めましょう。特に不動産の売却や定期預金の解約など、資産に大きな影響がある内容については権限に含めない、などの対策が必須です。そのような行為については、委任者の特別な承認が必要とすることや、個別に委任状を作成する形にした方がよいでしょう。
●定期的な報告をもらう
生前事務委任契約は、依頼者が求めれば、受任者に報告義務があります。
契約書の中にも、何かおこなう都度、報告をしてもらう項目を入れておくとよいでしょう。
●印鑑や通帳、権利書を預けない
勝手な横領を防ぐためにも、預金を下ろしてほしい時だけ印鑑と通帳を渡し、普段の管理は自身で行いましょう。必要な時に必要な道具を渡す事を契約に入れるとよいでしょう。
●本当に信頼できる人と契約
本当に信用できる人と契約しましょう。契約自体は家族や親族間でも可能ですが、立会や事務を行う時間や能力がある事が必要です。能力があっても、信頼できる人物かを十分に検討する必要もあります。
難しい場合は、専門の企業や専門家(行政書士)などに依頼する事をおすすめします。
任意後見契約との違い
契約の内容は任意後見契約とほぼ同様ですが、金融機関や役所の個々の事案によっては委任状が必要になってくる場合もあります。トラブルのないよう、生前事務委任契約後の手続きの際に、顔見せや引継ぎを行っておくとよいでしょう。
また、生前事務委任契約と一緒に任意後見契約を結んでおくと、認知症などで判断力が低下してきた場合に速やかに契約を移行できます。元気なうちは生前事務委任契約によってサポートしてもらい、判断能力が衰えてしまったあとは、任意後見契約で支援してもらうというスムーズな流れを作ることができます。新たな契約の手続きや料金なども重複せず、負担も少なくなります。
最後に・・・
生前事務委任契約を締結すれば、自分の判断能力があるうちでも財産管理や手続きを任せることができるため、安心して生活することができます。念のため、判断能力が衰えた場合や自身の死後の対策も考えて、任意後見契約、死後事務委任契約の締結も合わせて検討しておきましょう。