認知症と向き合うグループホームの役割
認知症は、長寿化が進む日本において誰もがなりうる病であると同時に、解明されていない点も多い病です。「家族が認知症と診断され、日常的に介護が必要になった」または「現在認知症の家族の介護をしている」という場合、今後のことを考えるにあたり、選択肢の一つとして検討されるのが介護施設ではないでしょうか。なかでもグループホームは認知症ケアの専門施設として、共同生活・地域交流・在宅支援を通じ、地域における認知症ケアの拠点となっています。こちらの記事ではグループホームの特徴について解説します。
目次
グループホームとは
グループホームとは、認知症の診断を受けた高齢者(原則65歳以上)の方が、少人数で共同生活をおくるための施設です。「認知症対応型共同生活介護施設」とも呼ばれ、専門スタッフの支援を受けながら、自立した生活を目指します。
施設内は、ユニットと呼ばれる複数の居室と台所、食堂などで構成された空間になっています。ユニットの定員は5~9人と少人数で頻繁に入れ替わることがないため、生活環境の変化に戸惑うことなく穏やかに過ごせます。「家事を分担する共同生活の場」が基本のため、入居者と家事などの役割分担をして、自分でできるところは自分で行い、必要な介助を受けて生活していきます。
グループホームへの入居条件と退去になるケース
グループホームに入居可能な方は、以下の条件に当てはまる方です。
《入居》
◉医師に認知症の診断を受けた方
◉65歳以上の方
65歳未満でも特定疾病を持っている場合は入居可能な場合があります。
◉要支援2または要介護1以上の認定を受けた方
ただし、基本的には自立支援を目的としているので、重度の認知症の方、寝たきりの方は入居を断られる場合がありますので注意しましょう。
◉施設と同一の市区町村に住民票がある方
認知症グループホームは、介護保険の中で市区町村が運営する「地域密着型サービス」に分類されています。
この趣旨は要介護度が重い状態になっても、住み慣れた生活圏域内で生活ができるようにするという点にあるため、現在お住まいの地域の施設にしか入居できません。住民票を移したとしても、原則、転入後一定期間(自治体によって異なりますが、通常3〜6カ月)は地域密着型サービスを利用できません。
◉ひととおり自分で身の回りのことができ、集団生活を営むことに支障のない方
他の入居者と共同で生活するのが難しいと判断される場合は、入居を断られる場合があります。
特に、暴言・暴力など他の入居者に迷惑をかける行為があると認められると、入居はできません。また、重度の要介護者の方や医療的ケアを必要とする方、感染症にかかっている方なども入居を断られることがあります。
《保証人》
入居には原則、保証人(身元引受人や連帯保証人)が必要です。認知症グループホームの場合、入居時点で入居者本人の判断能力が衰えているケースも多いため、保証人が入居の手続きや利用料の振込み、入院時・退去時の手続きなどを代行します。
保証人を頼める身寄りがいない場合は、成年後見制度の利用をご検討ください。
《退去になるケース》
退去理由として最も多いのが入院です。よくあるのが長期入院により退院のめどが立たないケースや、退院後に医療処置が必要になり対応が難しいケースです。また、費用の滞納が解消されない場合は、施設側から契約解除を通告できます。なお、認知症の影響で自傷・他害行為があるような場合は一度入院し治療を受けることが一般的で、ただちに退去を求められることは少ないようです。
メリットとデメリット
《メリット》
◉住み慣れた地域で、家庭に近い環境で生活ができる
高齢者が住み慣れている地域で、長く生活を続けられるように創設された「地域密着型サービス」のため、同じ地域に住んできた人同士で共同生活を送れるので、入居者同士でのコミュニケーションも取りやすいといえます。
また、グループホームは「身体状態が比較的良好な認知症」に方が入居するため、配膳や後片付け、おやつの準備など、できる限り自立した生活を送り、できなくなっているところはスタッフの介助を受けながら行うのが特徴です。多くの時間をリビング件食堂の共有スペースで、入居者の皆さんと家族のように一緒に生活します。
◉スタッフは認知症ケア専門
ほかの介護施設だと、「認知症受け入れ可」とうたっていても、認知症の知識と経験が豊富な職員がいるとは限りません。しかし、グループホームに常駐する職員は、認知症ケアの知識と経験が豊富で、徘徊行動といった認知症特有の症状にも適切に対応してくれます。
日中は入居者3人に対して1人以上、夜間は1ユニットに対して1人以上の職員を配置することになっています。
地域のお祭りやボランティア、クリスマス、誕生日会への参加はもちろん、利用者自身もスタッフと一緒に簡単な準備を行います。意識せず楽しみながら、頭を使ったり手先を動かしたりして認知症ケアができるように努めています。
《デメリット》
◉空きが出にくい
グループホームは1ユニット5~9人、1つの施設に原則2ユニットまでと定められているため、1つの施設に最大で18人しか入居できません。認知症の高齢者にとって、人の入れ替わりが多い大人数の施設はストレスを感じやすいので、少人数制なのはとても魅力的ですが、それ故に即入居は難しい場合があります。また、近年は認知症の人数が増加しており、グループホームの需要が高まっていることも、すぐに入居できない要因の1つです。
◉看護師のいない施設が多い
グループホームは基本的に、身体の状態が安定している高齢者が日常生活をおくる施設のため、医師や看護師の配置義務はありません。そのため、これまで服薬管理や日常の健康管理、通院介助など医療行為は行われてきませんでした。近年は看護師を配置した施設も増えてきましたが、まだまだ医療体制が整っていない施設も一定数存在するのが現状です。
2009年の介護保険法改正を機に、「看取りサービス」に対応するグループホームにおいて、「看取り介護加算」を受け取れるようになったことから、近年では看取りに対応する施設が増えてきていますが、対応していない施設で看取りが必要となった場合、病院や介護施設など、ほかの施設への転居を求められる可能性があります。
最後に・・・
認知症を抱える方々には適切なサポートが必要です。認知症グループホームは「自宅のようなアットホームな環境で暮らしたい方」「ほかの入居者様やスタッフと積極的に交流したい方」におすすめです。一度満室になると空きが出にくいことから、なるべく複数の施設を見学し、気に入った施設があれば申し込みしておくことをおすすめします。