看取りの意味と大切さを知る
自分や家族の人生の最期を考える時、看取りについて考えることも少なくありません。また、介護施設の入居を検討をし始め、見学などに行くと、必ず説明で出てくるのは終末期対応の話です。本記事では、「看取り」と「緩和ケア」「ターミナルケア」の違いや、病院や在宅、介護施設でのケア対応の違いについてご紹介します。尊厳ある人生の終え方について共に考えてみましょう。
目次
看取りとは
元々は介護をするうえでの世話・看病など、患者を介護する行為そのものを表す言葉でした。現在では、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断した上で、亡くなるまでの介護計画について患者と医療ケアチームで話し合い説明を受け同意し、介護を受けることです。鼻から管を通し、点滴を打つような医療行為や治療による延命は看取りには含まれません。
2022年に病院で亡くなった方は、全体の64.5%でした。《 厚生労働省・厚生統計要覧(令和5年度) 第1-25表 死亡数・構成割合,死亡場所×年次別》一方、在宅や老人ホームで看取りをする機会は全体の3割弱。終末期の現場では「最期は自宅で看取りたい」とご本人や家族が願っても、なかなかそうもいかない現実があります。
間違いやすいケアの種類
看取りと似たようなものと考えられがちなケアに「緩和ケア」や「ターミナルケア」があります。
《緩和ケア》
2002年にWHO(世界保健機関)により定義された「緩和ケア」とは、『生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。』とあります。
日本では主に『がん』の宣告をされた人を対象に緩和ケアを施すことが多く、患者の身体的・精神的な苦痛をやわらげることにより、『生活の質』を重病になる前の状態から、なるべく低下させないようにすることができます。
がんをはじめとした病気の治療と並行して行われるので、末期に行うとは限りません。医師や看護師のみならず、薬剤師や栄養士、医療ソーシャルワーカー、福祉関係者といったチームで取り組むものです。
《ターミナルケア》
ターミナルケアは、「終末期医療」や「終末期看護」とも呼ばれます。その名の通り、終末期における治療や看護を行います。一方で看取りの場合は、日常生活におけるケアが中心となります。
余命数か月など、死までの時間がはっきりした段階で、延命のために行う積極的治療ではなく、残された生活の質を維持向上させることが目的とされています。そのため、開始時期の選択は非常にデリケートです。
最期までの日々を医師や看護師、家族がケアを行い、本人が少しでも穏やかに過ごすことができるよう、促していくものです。
家族との対話:看取りにおけるコミュニケーションの重要性
看取り介護で必要となる対応は、大きく分けて3つがあります。それぞれどのような内容なのか、詳しく見ていきましょう。
《身体的ケア》
利用者ができる限り穏やかに暮らせるよう、生活の質が保てる環境を整えていきます。
●照明や室温等の環境整備 ●栄養・水分補給の支援
●入浴支援 ●体位変換・身体的苦痛の緩和
●褥瘡ケア ●バイタルサインのチェック
●口腔ケア ●定期的な居室巡回
●排泄ケア
《精神的ケア》
本人が不安や孤独感を感じないよう、気持ちに寄り添い、コミュニケーションを図っていきます。
●適切な頻度のコミュニケーション
●適度なスキンシップ
●利用者のプライバシーの尊重
●安心できる環境の整備
《家族のケア》
家族のサポートも看取り介護における大切な要素です。「大切な家族が近い内に亡くなってしまう」と分かっている状態は、非常に大きなストレスとなり、精神的にも身体的にも不安定になります。家族にも寄り添うことが大切になります。
看取る場所による違い
看取り介護が行われる主な場所は、病院、自宅、介護施設の3つです。
《病院》
自宅や介護施設では提供できない、レベルの高い医療を受けられる点が最大のメリットで、容体が急変した時も安心です。しかし、医療行為がないと入院そのものが叶わないことが多く、受け入れてくれる病院は少ないのが現状です。
《自宅》
住み慣れた自宅で最期を迎えたい、という希望はとても多いです。しかし実際はハードルが高く、家族による日常的な介護に加えて、ケアマネジャーや在宅医を見つけ、在宅医、訪問看護師、理学療法士、在宅診療の可能な歯科医、栄養士らと家族がタッグを組み、看取りチームを編成することが不可欠となります。
実際に、現在在宅で看取りを行えた方は10%程度しかいないため、かなり難しいことを念頭に置いておきましょう。
《介護施設》
医療での回復が難しく、在宅介護も困難な場合に選ばれることが多く、近年は増加傾向にあります。
ただし、家族やご本人が施設での看取りを希望していても、その体制ができていない施設の場合や、本人の容態が施設のできる対応を超えた場合は、対応可能なほかの施設や病院へ移ることになるため、入居の前に看取りに関しての確認が必要です。
最後に・・・
高齢化が進む日本において、看取りへの理解を深めることは非常に重要です。団塊世代が、軒並み平均寿命に達する2040年台には、療養病床が不足するという懸念がされているため、今後は介護施設での看取りは増えていくと予想されます。こちらの記事を参考にして、一度看取りについて考えてみてはいかがでしょうか。